「延長タイブレーク」のスコア
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第108回全国高校野球選手権大会 ― 今年の夏の甲子園も様々な悲喜こもごものドラマと共に、数多くの熱戦が繰り広げられました。そんな中、今回は9回まで戦ったものの両チーム決着がつかなかった場合に行われる「延長タイブレーク方式」について、スコアを通して振り返ってみたいと思います。
取り上げるのは、2026年8月9日(日)、大会第5日目に行われた一回戦第2試合「鳴門渦潮(徳島) 対 八王子実践(西東京)」の試合です。9回2アウトまでわずかに1点のリードを守り抜いてきた鳴門渦潮でしたが、甲子園は初打席となる八王子実践の代打・金子 侑樹(かねこ ゆうき)選手による値千金のタイムリーヒットにより1対1の同点。
その裏の鳴門渦潮の攻撃は3者凡退でサヨナラの追加点を奪えず、試合は今大会初の延長タイブレークへと突入することになりました。
今回のスコア解説は、そんな場面からスタートします。
10回表:八王子実践の攻撃
延長タイブレークでのランナーは、次打者から数えて2つ前の打者が二塁上、一つ前の打者が一塁上のそれぞれランナーとなって、ノーアウト1・2塁の状態から開始されます。スコアには、それとわかるようバッターボックスの欄に「TB①」「TB②」として、それぞれ記載します。
八王子実践の攻撃は、8番・山本 悠陽(やまもと ゆうや)選手から始まりました。

ここはセオリー通りに、きっちりと送りバントを成功させて、それぞれランナーを進塁させ1アウト2・3塁とします。続く9番・倉持 友羽(くらもち ゆうわ)選手はセカンド正面のゴロ。そのため、3塁ランナーは本塁を突けません。

打順返って1番・近藤 秀人(こんどう ひでと)選手は四球を選び、2アウト満塁に。ですが、2番・桜 泰成(さくら たいせい)選手の当たりはセカンドゴロとなり、遂に得点を奪うことができませんでした。
なお、この回はすべてのアウトを鳴門渦潮のセカンド・山本 飛佑雅(やまもと ひゅうが)選手が捌きましたが、その全てにおいて捕球してから一度も塁上に転送することなく、自らベースを踏んでアウトを重ねた確実性が光りました。この土壇場のピンチにあって、称賛に値する沈着冷静な”隠れたファインプレー”でした。
そしてこの山本選手こそが、この試合の劇的な幕切れを呼び寄せる張本人であることは、当然ながらこの時点では、本人を含めて誰も知る由はありませんでした。
10回裏:鳴門渦潮の攻撃
かわって、鳴門渦潮も2塁に代走として大城 光(おおしろ ひかる)選手が入り、1塁には西内 瑠唯(にしうち るい)選手。打順も八王子実践の10回表の攻撃とほぼ同じ始まり方でした。
そして、ここで八王子実践にいきなりのビッグプレーが飛び出します。プレーボールがかかったまさにその直後、サインプレーで塚原 翔太(つかはら しょうた)投手が2塁へ素早く送った牽制球で、ランナーがタッチアウトとなったのです。

一瞬にしてチャンスの芽を摘まれたかに思われた鳴門渦潮でしたが、9番・横澤 奎芯(よこざわ けいしん)選手によるチームプレーに徹したライトへの進塁打で、1・3塁とし一打サヨナラのチャンスメイク。チームに押し寄せた嫌な流れを払拭してみせます。
しかし、続く1番・濱 彩人(はま あやと)選手の打球はセカンド正面をついて、3塁ランナーは動けずに2アウト。ここでバッターボックスに立ったのが、10回表で堅実な守備を見せた2番・山本選手でした。

1ボール・ノーストライクで迎えた、八王子実践・塚原投手による渾身の131球目。山本選手がコンパクトに振り抜いた打球は、三遊間の真ん中を抜け、3塁ランナーが生還。鳴門渦潮が今大会初となる延長タイブレークを制して八王子実践を破り、見事サヨナラ勝利で一回戦突破を果たしました。
最後の最後まで息詰まる攻防が続く、本当に素晴らしい試合でした。
賛否の分かれる「延長タイブレーク方式」だが…
高校野球ではすっかり定着した感のある「延長タイブレーク方式」ですが、9回まで死力を尽くして両者相譲らずという好ゲームを戦い抜いた両チームにとって、時に残酷とも思える結末を突きつけてしまう面が確かにあります。また、労せずノーアウト1・2塁という極めて攻撃側に有利な状況で試合が進められるため、本来の野球のルールを度外視している点も否めません。
とはいえ、選手における疲労、特に投手と捕手の身体的な影響の考慮や、特に夏の大会での熱中症をはじめとした猛暑対策、そしてなにより大会のスムーズな運営という側面でのメリットもあり、実施における賛否の議論は、きっとこれからも途絶えることはないのでしょう。
ですが、選手達が死力を尽くして残した”立派な記録”であることには、どんなルールであっても変わりはありません。そんな彼らの果敢で尊いプレーを、しっかりとスコアの形でこれからも残したいものです。
参照:【高校野球 甲子園】八王子実践vs鳴門渦潮 甲子園が沸いた大熱戦!9回同点!ビデオ判定で覆る!タイブレークの死闘9回〜全球!
