センバツ準決勝は、智弁学園が中京大中京に2-1で逆転勝ち。中京大中京が3回に先制し、試合はそのままロースコアの投手戦へ入りましたが、智弁学園が6回に同点、8回に4番・逢坂悠誠の適時二塁打で勝ち越し、その1点を守り切って10年ぶりの決勝進出を決めました。智弁学園は6回に馬場井律稀の適時打で追いつき、8回に逢坂の適時二塁打で勝ち越し、先発・杉本真滉が9回1失点で力投で上回りました。
この試合は、派手な打ち合いではなく、むしろ、「少ないチャンスをどちらがより確実に形にできたか」がすべてでした。中京大中京は7安打1得点、智弁学園は6安打2得点。安打数だけなら中京大中京が上回っていますが、智弁学園は終盤に得点圏で一打を出し切り、中京大中京は再三の走者を得点に結びつけられませんでした。
試合結果概要
試合は3回表、中京大中京が1死三塁から3番・神達大武の中犠飛で先制。智弁学園はしばらく安藤歩叶、太田匠哉の継投の前に抑え込まれますが、6回裏2死一、三塁で5番・馬場井が左前適時打を放って同点。さらに8回裏1死二塁で4番・逢坂がライト線へ勝ち越しの適時二塁打を放ち、これが決勝点になりました。
つまりこの一戦は、中京大中京が先に理想の形を作りながら、智弁学園が終盤の勝負どころで上回った試合です。智弁学園は準々決勝の花咲徳栄戦でも大逆転を見せており、この準決勝でも「終盤でひっくり返す再現性」がはっきり出ました。
スコアが動いた場面
3回表 中京大中京が犠飛で先制
中京大中京は3回、1番・田中大晴と2番・半田直暉の連打でチャンスを作り、1死三塁から3番・神達がセンターへ犠牲フライ。これで1-0となりました。大量点ではないものの、準決勝の重い空気の中では非常に価値の高い先制点でした。
6回裏 智弁学園が二死から同点
智弁学園は6回、死球と相手失策で2死一、三塁を作ると、5番・馬場井がレフトへ同点適時打。ここは中京大中京にとって、守り切りたい二死から試合を振り出しに戻された場面でした。
8回裏 逢坂悠誠の勝ち越し二塁打
8回裏、智弁学園は2番・志村叶大が二安打で出塁。1死二塁から4番・逢坂が1-1からライトへ勝ち越しの適時二塁打を放ち、2-1。結局、この一打が試合を決めました。
投打のハイライト ― 何が勝敗を分けたか
勝敗を分けた最大の要因は、智弁学園が終盤の得点圏で4番・5番に一本が出たことです。逢坂は4打数2安打1打点、馬場井は4打数1安打1打点。どちらも数字上は突出した爆発ではありませんが、必要な場面で必要な打撃を見せました。ロースコアでは、こうした「1本の価値」が極端に大きくなります。
一方の中京大中京は、1番・田中が5打数2安打、4番・荻田が2打数2安打2四球と、上位から中軸にかけて出塁はできていました。それでも得点は3回の犠飛による1点のみ。つまり敗因は「まったく打てなかった」ことではなく、走者を置いた次の一打が続かなかったことです。
また、失策も試合の流れに影響しました。中京大中京は2失策、智弁学園は1失策。特に智弁学園の同点につながった6回の相手失策は、ロースコアゲームではかなり重いミスでした。智弁学園はそのわずかな綻びを見逃さず、すぐ得点に変えた。この「相手のミスを得点へつなげる速さ」も大きな差でした。
両軍のスターティングオーダーと打席結果のまとめ:DHの有効性
高校野球では2026年度シーズンインからDH制が採用されており、使用する場合は試合開始前の申告が必要です。途中からDHを使い始めることはできません。
この試合では、両校ともDHを採用しました。智弁学園は3番DHに太田蓮、中京大中京は7番DHに佐藤類を置いています。スタメン表からも、両チームが「投手に打席を回さず打線の厚みを保つ」意図を持っていたことが分かります。
智弁学園スタメン
- 捕 角谷哲人 3打数1安打、1死球
- 二 志村叶大 3打数1安打、2得点、1犠打
- DH 太田蓮 2打数0安打、1四球
- 一 逢坂悠誠 4打数2安打1打点
- 中 馬場井律稀 4打数1安打1打点
- 左 北川温久 2打数0安打、1死球
- 三 多井桔平 2打数0安打、1犠打
- 右 添本一輝 3打数1安打、1失策誘発
- 遊 八木颯人 2打数0安打、1犠打
合計は26打数6安打2得点でした。
中京大中京スタメン
- 遊 田中大晴 5打数2安打
- 三 半田直暉 4打数1安打
- 中 神達大武 3打数0安打1打点(犠飛)
- 右 荻田翔惺 2打数2安打、2四球
- 一 松田知輝 4打数0安打
- 左 渡辺竜源 2打数0安打、2四球
- DH 佐藤類 4打数1安打
- 捕 津末駿晃 3打数0安打
- 二 森風馬 3打数0安打
途中出場の杉原舞樹が代打で1安打。チーム合計は32打数7安打1得点でした。
DHの有効性
この試合では、DHは「大当たり」ではないが、打線の構造を整える意味で有効だったと見るのが自然です。智弁学園の太田は無安打ながら四球を選び、3番に投手ではなく打者を置くことで、4番・逢坂へつなぐ設計を維持しました。中京大中京の佐藤も4打数1安打で、7番に打撃型を置くことで下位打線を軽くしない効果はありました。決勝打や大活躍はなくても、DHによって“投手の打席”が消え、打線の切れ目が減るという制度の本来の効果は出ていた試合です。
オーダーの意図
智弁学園のオーダーは、1番・角谷、2番・志村、3番DH・太田、4番・逢坂、5番・馬場井と、左打者中心で上位に圧をかける構造でした。実際、同点の6回は角谷の死球から、勝ち越しの8回は志村の出塁から始まっています。つまり、上位が出て中軸が返すという基本設計が、終盤の得点にきれいにつながりました。
中京大中京は、1番・田中、2番・半田、3番・神達、4番・荻田で得点機を作る構成で、実際に3回の先制点はその並びから生まれています。さらに7番DH・佐藤を置くことで、下位でも攻撃を切りたくない意図が見えます。ただし、この日は5番・6番・7番・8番・9番で合計16打数1安打と、下位から中位のつながりが弱く、先制後の追加点につながりませんでした。
投手陣の系統と結果のまとめ
智弁学園
- 杉本真滉 9回、137球、7被安打、8奪三振、4四球、1失点、完投。
智弁学園は継投なし。準決勝をエース1人で投げ切りました。
中京大中京
- 安藤歩叶 5回、69球、3被安打、3奪三振、0四球、1死球、無失点
- 太田匠哉 3回、38球、3被安打、1奪三振、1四球、1死球、2失点
中京大中京は安藤から太田への2投手継投でした。前半は安藤で試合を作り、終盤を太田に託した形です。
この数字からは、両校とも投手陣は十分に機能していたことが分かります。中京大中京の投手陣も計6安打2失点ですから、決して崩壊したわけではありません。それでも負けたのは、杉本の完投がそれ以上に強烈だったからです。
継投の意図
智弁学園は、継投を使わず杉本で押し切る明確なプランでした。137球と球数はかさみましたが、9回を通じて1失点、8奪三振。準決勝という重い試合で、ベンチは「この試合は杉本で勝つ」と腹をくくっていたと見ていいでしょう。特に中盤以降は要所で三振を奪い、流れを相手に渡しませんでした。
中京大中京は、先発・安藤が5回無失点で役目を果たしたあと、6回から太田へつなぐ形でした。これは、智弁学園打線に二巡目・三巡目で同じ投手を見せ続けない意図があったと考えられます。采配としては理解しやすく、実際に6回までは最少失点でしのいでいました。ただ、結果としては6回に追いつかれ、8回に勝ち越しを許したため、終盤をどう抑え切るかの勝負で智弁学園が上回ったと言えます。
総括
この試合の本質は、智弁学園が「ロースコアの1点差」を勝ち切るだけの完成度を持っていたことです。準々決勝の花咲徳栄戦では大逆転、そして準決勝では2-1の投手戦を逆転。まったく違う試合展開の中で、どちらも勝ち切ったのは偶然ではありません。終盤の得点力、4番の勝負強さ、そしてエース杉本の完投。決勝進出にふさわしい内容でした。
中京大中京も、先制して試合を主導し、投手陣も崩れず、十分に勝てる内容でした。ただ、ロースコアの接戦では、1つの失策、1本の適時打、1人の完投が決定的になります。この日は、その細部で智弁学園がわずかに上回っていました。
参照:【高校野球 甲子園】 中京大中京(愛知) vs 智弁学園(奈良) 決勝進出をかけた痺れる投手戦! 【第98回選抜高校野球 準決勝 全打席ハイライト】 2026.3.29 センバツ 智辯学園
