山梨学院が「初回の完成度」で逃げ切り 長崎日大の追い上げをしのいだ一戦
2026年3月22日に甲子園で行われたセンバツ1回戦は、山梨学院が長崎日大を5-3で下しました。山梨学院は初回に一挙5得点。最終スコアこそ2点差ですが、試合の芯を握ったのは立ち上がりの攻撃でした。山梨学院は9安打5得点、長崎日大は7安打3得点。山梨学院は先発・渡部瑛太、竹下翔太、木田倫大朗の継投で逃げ切りました。
試合結果概要
この試合をひと言でいえば、「山梨学院が初回で作った5点の貯金を、投手リレーと最少失点で守り抜いた試合」です。山梨学院は初回、菰田陽生の先制ソロをきっかけに、適時打、相手失策を絡めて一気に主導権を握りました。一方の長崎日大は1回裏に1点、7回裏に2点を返して追いすがりましたが、山梨学院が9回を締めて逃げ切りました。
スコアが動いた場面
まず試合を決定づけたのは1回表です。山梨学院は1死から菰田陽生が左翼線へ先制本塁打。さらに杉村空飛の二塁打、藤田蒼海の二ゴロ野選、菅原歩夢の左前適時打、住友輝人の右前打に右翼手後逸が重なったプレー、そして光永惺音のスクイズで、この回一挙5点を奪いました。
長崎日大はその裏、太田涼介の安打と竹内剛の四球で好機を作り、4番・川鍋伶恩の三ゴロで三塁手の悪送球が絡んで1点を返します。これで0-5が1-5となり、試合は完全なワンサイドにはなりませんでした。
そして最大の反撃は7回裏です。梶山風岳の中前打、植木奏翔の右前打、太田涼介の遊撃内野安打で2死満塁を作ると、鶴山虎士がセンター前へ2点適時打。5-3まで迫り、球場の空気は一気に緊張感を増しました。
投打のハイライト 何が勝敗を分けたか
勝敗を分けた最大のポイントは、山梨学院の「初回の打撃の連続性」です。単発の長打だけでなく、本塁打、二塁打、野選を呼ぶ打球、適時打、スクイズまで、得点の取り方が多彩でした。つまり山梨学院は、長打力だけでなく、1点を取り切る攻撃の引き出しを初回にまとめて見せたわけです。
逆に長崎日大は、7安打を放ちながらも、山梨学院先発・渡部から6回で3安打1失点に抑え込まれたのが痛かったと言えます。7回は竹下から4安打を集めて一気に2点を返しましたが、その後は木田が2回1/3を無安打4奪三振で締め、反撃の流れを断ち切りました。
もうひとつ大きいのは、山梨学院が「5点を取ったあとに、無理に動きすぎなかった」ことです。終盤まで古賀友樹を攻略し切れなかった一方で、守備と継投で試合を壊さず、2点差ゲームの圧力に耐えました。大量点のあとに雑にならず、勝ち方を知っていた試合とも言えます。
両軍のスターティングオーダーと打席結果のまとめ DHの有効性
なお、このセンバツは高校野球でDH制が導入された最初の春で、日本高野連は導入目的を「投手の負担軽減」と「出場機会の増加」と説明しています。
山梨学院スタメンと打席結果
- 石井陽昇(中) 5打数2安打
- 菰田陽生(一) 3打数2安打1打点、先制本塁打
- 金子舜(左) 2打数0安打2四球
- 杉村空飛(右) 4打数2安打、二塁打
- 藤田蒼海(三) 3打数0安打1打点(初回の二ゴロ野選で打点)
- 菅原歩夢(指→一) 4打数1安打1打点
- 住友輝人(遊) 4打数2安打
- 光永惺音(捕) 2打数0安打1打点(スクイズ成功)
- 島田達矢(二) 3打数0安打1死球 合計32打数9安打5得点でした。
長崎日大スタメンと打席結果
- 太田涼介(捕) 4打数3安打
- 鶴山虎士(右) 4打数1安打2打点
- 竹内剛(左) 3打数0安打1四球
- 川鍋伶恩(三) 4打数1安打
- 小池郁(一) 3打数0安打、途中で森聖陽が代打出場
- 梶山風岳(遊) 4打数1安打1得点
- 植木奏翔(中) 4打数1安打1得点
- 川口泰生(指) 3打数0安打1死球
- 平野博裕(二) 4打数0安打 合計34打数7安打3得点でした。
DHの有効性
この試合では、DHの「明暗」が比較的はっきり出ました。山梨学院のDH・菅原歩夢は初回に左前適時打を放ち、その後は一塁に回って出場継続。DH枠が初回のビッグイニングにしっかり機能した形です。対して長崎日大のDH・川口泰生は3打数0安打1死球。無安打でも役割自体は果たし得ますが、この試合に限れば攻撃面での上積みは山梨学院の方が大きかったと言えます。
オーダーの意図
山梨学院の並びは、1番・石井で出塁し、2番・菰田、4番・杉村で長打圧をかけ、5番以降で確実に返す設計に見えます。実際、初回は石井の後こそ1死となりましたが、菰田の一発から金子の四球、杉村の二塁打、藤田・菅原・住友・光永と、3番から8番までが切れずに得点を積み上げました。上位の破壊力と下位まで続く得点能力を両立させたオーダーでした。
長崎日大は1番・太田、2番・鶴山、3番・竹内で走者を作り、4番・川鍋で返す形。実際に1回裏はその構図通りに得点しましたし、7回裏も太田がつなぎ、鶴山が返しました。ただし5番以下で長打や連打が続かず、追い上げは局面単位で終わってしまいました。打線の狙い自体は見えたものの、山梨学院のように“線”にはなり切らなかった印象です。
投手陣の系統と結果のまとめ
山梨学院は渡部瑛太が先発し、6回87球、3安打1失点、5奪三振1四球。続く竹下翔太は0回2/3で4安打2失点。最後は木田倫大朗が2回1/3を無安打無失点、4奪三振で締めました。チーム合計では7安打3失点でしたが、自責は2。
長崎日大は古賀友樹が一人で9回を投げ切り、163球、9安打5失点、自責3、10奪三振2四球でした。初回の5失点は重かったものの、その後は2回から9回まで無失点。終盤まで試合を生かし続けたという意味では、数字以上に粘り強い完投でした。
継投の意図
山梨学院の継投はかなり分かりやすいです。まず先発・渡部でゲームを作り、7回の勝負どころで竹下へスイッチ。ところが竹下が捕まり、2死満塁まで行かれたため、そこで木田を投入して傷口を広げずに終盤を締める判断に切り替えました。つまり、予定通りの“分業”から、7回途中で“火消し優先”へ舵を切った継投です。結果として木田が8、9回をゼロで抑えたため、この継投は成功だったと言えます。
なお、この試合では7回裏の山梨学院の投手交代をめぐり、大会本部が公認野球規則の適用誤りを認めて謝罪しています。ただし、後続のプレーは有効とされ、試合結果への影響はないと説明されました。話題性はありましたが、勝敗そのものを分けた本質は、やはり初回の5得点と終盤の木田の火消しです。
山梨学院:菰田陽生のバッティング分析
この試合の菰田は、結果だけでなく内容も際立っていました。1回表の先制弾は、1死走者なしから初球のカーブを左翼線へ運んだ一発。右打者が甘く入った変化球を迷わず振り抜き、引っ張り切って長打にした打撃で、いわば「待ち負けしない強打者の打ち方」でした。
さらに5回表には再び左前打。ホームランが“狙って仕留めた一撃”なら、こちらは球筋をしっかり見て逆らわずに打ち返した安打です。3打数2安打1打点で、長打も単打も出たことから、単なる一発屋ではなく、対応力のある打者であることを示しました。
加えて見逃せないのは、菰田が5回裏に左手首を負傷して途中交代した点です。攻守両面で存在感の大きい選手だけに、山梨学院にとっては勝利の喜びと同時に不安も残る試合でした。少なくともこの1試合に限れば、菰田の先制弾が試合全体のトーンを決めた、と言っていいでしょう。
総括
この試合は、山梨学院が「最初の1イニングでどう勝つか」を明確に示し、その設計図通りに押し切ったゲームでした。長崎日大も太田の3安打、鶴山の2点適時打で粘りを見せましたが、5点ビハインドを追う展開は最後まで重かった。初回の攻撃設計、DHの活用、そして終盤の継投整理。この3点で山梨学院が一歩上回った一戦でした。
参照:【高校野球 甲子園】 山梨学院(山梨)vs長崎日大(長崎) 【第98回選抜高校野球 1回戦 全打席ハイライト】 2026.3.22 センバツ
